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HOME > 特集 > Topic > 第2世代5-HT3受容体拮抗剤「パロノセトロン」の臨床使用における可能性 −薬剤師の視点から−

東京医科大学病院 薬剤部
がん指導薬剤師

東 加奈子 先生
 
国際的には、すでにASCO、NCCNやMASCCなどから制吐療法に関するガイドラインが出ていましたが、2010年5月、わが国で初めての『制吐薬適正使用ガイドライン 第1版』が刊行されました。それに先駆け、アプレピタントや第2世代5‐HT3受容体拮抗剤であるパロノセトロンが国内で使用可能となり、悪心・嘔吐への対策を立てる環境が整ってきたと言えます。本稿では薬剤師の視点から、第2世代5‐HT3受容体拮抗剤の臨床使用における可能性を考えていきます。

パロノセトロンの特徴と外来化学療法での期待

 第2世代5‐HT3受容体拮抗剤であるパロノセトロンは、(1)血漿中消失半減期が約40時間と長い、(2)5‐HT3受容体への親和性が高い、という特徴を持ち、急性期のみならず遅発性の悪心・嘔吐にも有効です。血漿中消失半減期が長いため、使用上の注意に「1週間未満の短期間での反復投与は避けること」とあります。逆に考えれば、化学療法を施行する場合に、5‐HT3受容体拮抗剤に関しては1日目のみパロノセトロンを投与すればいいということになります。
外来化学療法施行時には、1日目は悪心・嘔吐を抑制するための治療が十分に行われるので、悪心・嘔吐の訴えの多くは、通院しない2〜3日目にみられます。1日目にパロノセトロンを投与すれば、悪心・嘔吐やその他の副作用の予防のために処方されていたたくさんの薬剤の1つを減らせる可能性があり、アドヒアランスの向上も期待できます。中には、2日目以降も制吐剤を服用することで安心するという患者さんもいますが、パロノセトロンは抗がん剤投与前に1回投与することで効果が持続することを説明し、理解していただければ、患者さんの悪心・嘔吐に対する不安の解消に繋がります。同時に、処方する医師や服薬支援を行う看護師にも、従来の第1世代の5‐HT3受容体拮抗剤との違いを説明し、理解してもらうことが重要です。このような説明は、チーム医療の中での薬剤師としての腕の見せ所だと思います。
また、2日目以降に悪心・嘔吐が発現した場合に、全身を精査し、便秘や電解質異常などで薬剤以外の要因が除外されていれば、その対策として5‐HT3受容体拮抗剤を検討する必要がなくなり、効率化に繋がります。

アプレピタント、デキサメタゾンを使用しない場合の可能性

 『制吐薬適正使用ガイドライン』では、中等度催吐性リスクへの対策として、5‐HT3受容体拮抗剤とデキサメタゾン、一部の抗がん剤ではアプレピタントとの併用が推奨されています。
しかし、アプレピタントはCYP3A4に対し用量依存的阻害作用を有し、抗がん剤を含めてCYP3A4に関連する併用薬剤と相互作用を起こす場合があるので、慎重に投与しなければなりません。服用に関しても、抗がん剤投与の1時間から1時間30分前、2日目以降は午前中に投与しなければならないなどの条件があります。
また、デキサメタゾンについても、糖尿病や肝炎の患者さんでは症状が悪化するおそれがあるため、積極的に投与することができないという制限があります。
一方、パロノセトロンに関しては薬物間相互作用は報告されていないので、併用薬の種類や合併症の有無にかかわらず使用することができます。抗がん剤投与前に1回投与することで急性期のみならず遅発期まで効果が期待できるパロノセトロンは、アプレピタントやデキサメタゾンが使用できない場合の5‐HT3受容体拮抗剤として有用です。

パロノセトロンの今後の課題

 上述のように、臨床使用の上で有効性が期待できるパロノセトロンですが、今後の課題として、連日投与の化学療法を施行した場合の効果が挙げられます。血液腫瘍の治療などでは、5日以上連続して抗がん剤治療を行う場合があり、その際に、1回の投与でどこまで効果が持続するかについては、まだ十分なエビデンスが出ていません。また、高度の催吐性リスクに対する他の制吐剤との併用方法や効果についても、今後の臨床試験の結果が待たれます。

PICC 2010年No.2

 

この頁の記事提供:株式会社医薬情報センター

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